時計好きの間では「ロレックスの3大発明」として広く知られている「オイスターケース」「パーペチュアル」「デイトジャスト」。これらは現代の機械式腕時計にまで色濃く受け継がれており、ロレックスはそれほどまでに腕時計史に影響を与えている。
ロレックスの3大発明
しかし、時計の歴史を紐解くと、これらは主に「ゼロから生み出されたのではなく」、優れた先人たちのアイデアを実用化・標準化へと高めた「完成度の革新」であったことが分かる。この3つの機構を当時の背景などを交えて解説したい。
1.1926年 オイスターケース
ねじ込み式の裏蓋・ねじ込み式のリューズによって高い防水性を実現した腕時計用のケース。開発当時、懐中時計などですでに一般化していたねじ込み式の裏蓋に加え、1925年にスイスの時計職人ポール・ペルゴー(Paul Perregaux)とジョルジュ・ペレ(Georges Peret)が取得していた「ねじ込み式リューズ」の特許(CH114948)を、ロレックスの創業者ハンス・ウイルスドルフがいち早くライセンスを買い取った。そのアイデアに巻き上げ時にクラッチ式を取り入れるなど改良を経て、完成度の高い防水ケースが作り上げた。そして同年1926年に「オイスター」の商標登録がなされた。

早くも1927年には、メルセデス・グライツがオイスターを着用してドーバー海峡を泳いで渡り、ロレックスはさらにその偉業を広告に活用し高い防水性を世界に証明した。
2.1931年 パーペチュアル機構
リューズを使用せずにゼンマイを巻き上げる機構。1931年、ロレックスは360度全回転式ローターを搭載した自動巻き上げ機構「パーペチュアル」を開発。

開発当時、ジョン・ハーウッドなどの完成度の高い自動巻き機構は既に存在していたが、「バンパー式」と呼ばれる、ローターが一定の範囲しか動かないものだった。ロレックスのパーペチュアルは、わずかな腕の動きでもゼンマイを効率よく巻き上げることができる更に実用性が高いものだった。現在世界中で作られている自動巻き機械式時計のほぼすべてが、この360度全回転ローター構造を踏襲している。
3.1955年 デイトジャスト機構
午前0時、瞬時に日付が切り替わる機構。1945年に登場した初代デイトジャストは、「防水・自動巻き・日付表示」を世界で初めて一つの腕時計に統合したモデルだった。一方で初代デイトジャストの日付変更は数時間かけてじわじわと変わるスローチェンジ仕様だった。

その後の1955年にキャリバー1065を開発。これにより、午前0時に瞬時に切り替わる「クイックチェンジ(瞬時切り替え)」へと進化を遂げた。
「ロレックスの3大発明」とは
「ロレックスの3大発明」は、ゼロからの完全な発明ではなく、「実用に耐えるレベルまで徹底的に改善した」ことによる評価であった。時計史において非常に重要な役割を果たしたこれらの発明が、現代の機械式腕時計のスタンダードとなっていることは間違いない。
このほかにもロレックスが発明や一般に定着させたものでは、
・3時位置のカレンダー
・サイクロップレンズ
・24H針と24HベゼルによるGMT
・ケース一体型リューズガード
・ヘリウム排出バルブ
・オイスターロック(二重ロック式バックル)
・904Lスチールを時計の外装に採用
なども挙げられます。
ロレックスはなぜ人気なのか
ハンス・ウイルスドルフは「何が求められているのか」と利用者のニーズをくみ取るマーケティング力に長けており、美しさや精度だけにとどまらず、腕時計の実用性を格段に高め、長きにわたり利便性の改善に投資を続けた。
さほど大きな事を成し遂げていないようにも思われるかもしれないが、このマーケティング力と実用化に対する姿勢は、他に類を見ない。偉人の起用や、各国のコレクターの存在、そして安定したリセールバリューなど。これらは全てロレックスのけた外れの実用性の探求とマーケティングの延長線上にある。現代でこそ当たり前の考え方ではあるものの、ハンス・ウイルスドルフは一世紀前からこういった取り組みを続け、その意思は現代にまで受け継がれている。
今もなお、ロレックスが実用機械式時計の頂点に君臨し続ける根本的な理由が前述の通りであり、その象徴が「ロレックスの3大発明」なのではないだろうか。
